大学受験の専門家の意見
折り返し地点の表示を見ることで「よし、あと半分だ」と気合いを入れ直すことができるし、一二五キロ地点の表示を見れば「よし、ラストスパートだ」と最後の力を振り絞ってギアチェンジを図ることができる。
もし自分がいま何キロ地点を走っているのか、まったくわからない状態で走らされたら、おそらくはとんどのランナーは途中でリタイアしてしまうことだろう。
だから見える化が大事なのだ。
ところがマラソンと違って勉強の場合は、この見える化がむずかしい。
語学や資格試験の勉強ならまだしも、ロジカルシンキングやプレゼンテーションの勉強の場合は、本当に自分が成長しているのか、なかなか実感がつかめないからだ。
特にロジカルシンキングなどは、知識を身につけることと、実践で使えるのとは別問題である。
では、勉強の見える化はどうやって図っていけばいいのか。
たとえばあなたが「上司が採用してくれる企画書を、スムーズに書けるようになりたい」と考えたとする。
そこであなたは会社帰りに書店に立ち寄り、「企画書の書き方」といった類いの書籍(テキスト)を購入した。
家でテキストを読み、「なるほど、企画書はこうやって書けばいいのか」と納得する。
ところが実際に企画書を書き上げて上司に提出したところ、修正の赤字で真っ赤になったペーパーが返ってきた。
「なぜだ?」とあなたは自問自答する。
また家に帰り、「企画書の書き方」の本をじっくりと読み直す。
すると最初に読んだときにはよく意味がわからなかった解説や、読み飛ばしていた項目が日に入ってくる。
「なるほど。
ここで著者が言いたかったのは、こういうことだったのか!」とあなたは理解する。
企画書を書き直して、上司に再び提出する。
上司からの修正は、さすがに前よりは減っているが、やはり赤字が目立つ。
そこで知識の習得と実践を繰り返すなかで、一冊の本をテキストとして読み直す。
すると最初は理解できなかった部分が理解できるようになり、ピンとこなかった部分についひらめても読んで閃くようになる。
つまり一冊のテキストを基準にして、自分がどこまで成長しているか(何がわかり、何がわからないか)を測ること(見える化)ができるようになるわけだ。
一冊のテキストがマイルストーンの役割を果たしてくれるのである。
資格試験の場合は、独学で勉強するよりも、スクールに通ったほうが圧倒的に近道であり効率的だ。
資格学校の教員は、資格を取るためのノウハウを熟知している。
そこで彼らを師匠と見定め、そのノウハウを学ぶために資格学校に通うのだ。
また見える化についても、教員が合格までの道のりを見える化し受講生に示してくれる。
だから受講生は、自分がいまどのあたりを走っていて、これからどこへ進めばいいのかを明確にイメージすることができる。
ちなみに「教員からノウハウを学ぶ」というのは、知識を学ぶのではなく、合格までの勉強の仕方を学ぶということである。
優れた資格受験向けの教員と凡庸な教員の見分け方は、勉強(知識)を教えようとしているか、勉強の仕方(知識の身につけ方)を教えようとしているかで判断できる。
私は受験生だったころ、予備校の授業を受けたときに「なるほど、勉強というのはこんなふうにすればいいものなのか」と勉強に開眼した記憶がある。
予備校の講師たちは、知識を私に教えるだけではなかった。
「知識の身につけ方」や「知恵の働かせ方」を私に教えてくれた。
こうした予備校講師の姿勢は、私にとって日から鱗だった。
なぜならそれまで私が受けてきた高校の授業では、教師はみな知識を私に授けようとしたからだ。
高校のころの私は、授業や宿題といえば暗記ばかりさせられていた記憶がある。
「魚を与えるのではなく、釣りの仕方を教えよ」ということわざが中国にあるが、まさに優れた講師は魚を与えるのではなく、釣りの仕方を生徒に教えてくれるものである。
釣りの仕方を学んだ生徒は強い。
教師からいちいち魚(知識)を与えられなくても、自分で必要な知識を釣って血肉にしていくことができるからである。
つまり魚を釣るまでの道筋がわかる(見える化できる)から、自分で魚を釣る(ゴールに到達する)ことができるようになるわけである。
「人に魚を与えれば、その人は、一日は食べていくことができる。
けれども釣り方を教えれば、その人は一生食べていくことができる」のである。
だから予備校や資格取得スクールは、勉強を教わる場ではなく、勉強の仕方を教えてくれる場として活用するべきである。
また勉強を教えるのではなく、勉強の仕方を教えようとしている教師に師事するべきである。
顔で教えたがる上司の言葉は、適当に聞き流せる優れたコーチの条件でもある。
日本の場合は残念ながら、仕事の仕方や練習の仕方を教えるのがうまい人が、必ずしも上司やコーチになるわけではない。
マネジメントの訓練を受けたわけではなく、自分自身がプレーヤーとして仕事ができ、名選手だった人のほうが出世していく。
そんな「名選手」が往々にしてやりがちなのが、自分のやり方を部下に押しつけるというスタイルだ。
「つべこべ言わずに、俺の言ったとおりに黙ってやれ」というやつである。
この話で有名なのが、元近鉄パフアローズの鈴木啓示監督と、野茂英雄投手や吉井理人投手との確執である。
一九九三年に監督に就任した鈴木監督は、「野球選手はとにかく走るものだ」という思い込みのもとに、野茂や吉井に対して徹底的な走り込みを命じた。
当時、科学的なトレーニングメニューを練習に取り入れていた野茂や吉井は、これに猛反発。
この対立が、野茂がメジャー行きを志願し、吉井が国内の他球団に放出されるきっかけになったといわれている。
が、最終的にはこの鈴木監督のお蔭で二人ともメジャーリーガーになったわけだ。
プロとして求められるのは、「自分で魚を釣る力を身につける」ことである。
「自分で自分の状態を見える化し、適切なトレーニングによってコンディションを整え、能力を高める力を身につける」ことである。
鈴木監督の指導方針に従ったとしても、自分で魚を釣る力は身につかない。
「俺の魚の釣り方に、おまえも従え」と言っているだけだからだ。
勉強ができる人とは、仕組みと環境づくりができる人大切なのは、自分の上司が自分流の勉強を教えようとしているのか、相手に合った勉強の仕方を教えようとしているのかを見極めることである。
自分に合った勉強の仕方を教えようとしているのなら師事すればいい。
勉強を教えようとしているのなら、野茂や吉井のように表立って反発しないまでも、適当に聞き流すことである。
「日経ビジネス』『日経ビジネスアソシエ」『日経トップリーダー』「日経情報ストラテジー』「日経ものづくり」(以上、日経BP社)、『週刊ダイヤモンド』『DーAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』(以上、ダイヤモンド社)、『Think--』(東洋経済新報社)、『大前研一通信」(大前研一通信事務局)、『ニューズウィーク日本版」(阪急コミュニケーションズ)、『TOPPOーNT』(パーソナルブレーン)・これらの雑誌はすべて私が定期購読しているもので、ほぼ週末にまとめて自宅に届けてもらう仕組みになっている。
週明けの通勤時にカバンのなかに詰め込み、行きと帰りの電車のなかで一気に読み込んでいる。
ほんの数十分で、頭のなかに情報を「ダーツ」と流し込んでいく感じだ。
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